職場で信頼される 簡潔に要点を伝える基本
はじめに
職場で円滑な人間関係を築き、周囲からの信頼を得るためには、様々なコミュニケーションスキルが求められます。その中でも、特に重要でありながら、意外と意識されていないのが「簡潔に要点を伝える」スキルです。
情報過多になりがちな現代のビジネスシーンでは、会議やチャット、メールなど、様々な場面で効率的なコミュニケーションが求められます。自分が伝えたいことを整理し、相手にとって最も重要な情報を分かりやすく伝えることは、相手の時間を尊重し、業務をスムーズに進める上で不可欠です。
この記事では、なぜ簡潔に要点を伝えることが職場の信頼につながるのか、そしてどのようにすれば簡潔かつ的確に情報を伝えられるようになるのか、具体的なポイントを解説します。
なぜ簡潔に要点を伝えることが信頼につながるのか
簡潔に要点を伝えるスキルは、単に話が短いということ以上の意味を持ちます。それは、相手への配慮と、情報整理能力を示す行為であり、結果として信頼性の向上に繋がります。
- 相手の時間を尊重する姿勢を示す: 忙しい中、自分の話に耳を傾けてくれる相手に対し、無駄なく情報を伝えることは、相手の貴重な時間を大切にしているという意思表示になります。これは、相手からの信頼を得る上で非常に重要です。
- 情報の誤解を防ぐ: 複雑な情報や長文は、相手が内容を完全に理解することを難しくし、誤解を生む可能性があります。簡潔に要点を絞ることで、伝えたい核となる情報が明確になり、認識のズレを防ぐことができます。
- 仕事のスピードアップに貢献する: 要点がすぐに掴めるコミュニケーションは、相手の理解を早め、意思決定や次の行動への移行をスムーズにします。これはチーム全体の生産性向上に繋がり、貢献者としての信頼を得やすくなります。
- 「分かりやすい人」「デキる人」という印象を与える: 情報を論理的に整理し、短い時間で 핵심 (ヘクシム：核心) を伝えることができる人は、思考がクリアで効率的に仕事を進められるという印象を与えます。これは、技術スキルだけでなく、ビジネスパーソンとしての信頼感にも繋がります。
特に、技術的な内容を非技術職の方に伝える場合や、短時間で多くの情報をやり取りする必要があるチャットコミュニケーションにおいては、簡潔さがより一層重要になります。
簡潔に要点を伝えるための具体的なポイント
では、どのようにすれば簡潔に要点を伝えることができるようになるのでしょうか。いくつかの具体的な方法を実践してみましょう。
1. 伝える前に「目的」と「結論」を明確にする
話したり書いたりする前に、以下の2点を自分自身に問いかけてください。
- 目的: 私はこのコミュニケーションを通じて、相手にどうしてほしいのか？（例：承認してほしい、情報を共有したい、意見を聞きたい、期日を伝えたい）
- 結論: 最も伝えたい、核心となる情報は何なのか？（例：〇〇の件で問題が発生しました、提案したいのは〇〇です、締め切りは〇月〇日です）
この2点が明確になっていれば、そこから逆算して話の構成を組み立てることができます。逆に、これらが曖昧なまま話し始めると、話があちこちに飛び、結局何が言いたかったのか分からなくなりがちです。
2. 結論から先に伝える（PREP法などを応用）
ビジネスコミュニケーションの基本としてよく言われるのが「結論から話す」ことです。これは、特に忙しい相手に対して有効です。
例えば、プロジェクトの進捗報告をする場合。 悪い例: 「先週は〇〇の作業をして、その前に△△の準備も進めていました。ただ、途中で予期せぬ問題が発生しまして、それがXXという状況で...（詳細な経緯が続く）...というわけで、期日に間に合わない可能性が出てきました。」
良い例: 「〇〇プロジェクトの進捗についてご報告します。結論から申し上げますと、現在の状況では期日までに完了できない見込みです。」（結論） 「理由としては、XXという問題が発生し、その対応に〇日かかる見込みだからです。」（理由） 「具体的には、YYの部分の改修に想定以上の工数がかかっています。」（具体例） 「今後の対応としては、A案またはB案を検討しており、来週までに再調整案を提出いたします。」（提案・結論の繰り返し）
これはPREP法（Point, Reason, Example, Point）という論理的な構成の一部を取り入れたものです。常に完璧に使う必要はありませんが、「結論」→「理由」→「詳細（必要に応じて）」という流れを意識するだけでも、話の分かりやすさが格段に向上します。
3. 不要な情報を削ぎ落とす
目的と結論が明確になったら、それらを伝えるために本当に必要な情報だけを選びます。
- 背景情報は最小限に: 相手が既に知っているであろう背景情報は省略するか、ごく簡潔に触れるだけにします。
- 詳細情報は後回しに: まずは要点を伝え、相手が関心を持ったり質問したりした場合に、具体的な詳細を補足します。
- 複数の話題は分ける: 関係ない話題を混ぜず、一つのコミュニケーションで一つの要点を伝えるように心がけます。
特に口頭での説明では、緊張したり、相手の反応を気にしたりして、つい余計な情報を付け加えてしまいがちです。話す前に「これは本当に伝える必要がある情報か？」と自問自答する癖をつけましょう。
4. チャットツールでの工夫
テキストベースのコミュニケーションが多いITエンジニアにとって、チャットでの簡潔さは特に重要です。
- 最初のメッセージで結論を伝える: 「〇〇の件で質問です」「△△について共有です」のように、何のメッセージか冒頭で分かるようにします。
- 箇条書きを活用する: 複数の質問や確認事項がある場合は、箇条書きで整理すると、相手は内容を素早く把握できます。
- 太字や改行を使う: 重要な単語を太字にしたり、適度に改行を入れたりすることで、視覚的に分かりやすくなります。
- ファイルの添付やリンクを活用: 長文の説明が必要な場合は、全てをチャットに書くのではなく、資料やドキュメントへのリンク、またはファイルを添付し、「詳細は資料をご確認ください」と誘導します。
- 返信で過去のメッセージを参照する: スレッド機能を使ったり、「〇〇さんの先ほどのメッセージについてですが」のように、どの話題に関する返信かを明確にします。
非同期コミュニケーションでは、相手は好きなタイミングでメッセージを確認しますが、その量が多すぎたり、要点が分かりにくかったりすると、確認が後回しにされる可能性があります。
5. 相手の理解度を確認しながら進める
口頭でのコミュニケーションにおいては、一方的に話し続けるのではなく、相手が理解できているかを確認しながら進めることが大切です。
- 「ここまでで何かご質問はありますか？」
- 「大丈夫でしょうか？」
- 相手の表情や頷きなどを観察する。
相手が理解できていないサインが見られたら、別の言葉で言い換えたり、具体例を加えたりして、伝え方を調整します。
練習方法
簡潔に要点を伝えるスキルは、意識して練習することで確実に向上します。
- 普段の会話で意識する: 同僚とのちょっとしたやり取りでも、「一番伝えたいことは何か？」を意識して話す練習をします。
- 「30秒プレゼン」を試す: あるテーマについて、30秒で説明する練習をしてみます。不要な情報を削ぎ落とす訓練になります。
- メールやチャットメッセージを書いた後に読み返す: 送信する前に一度読み返し、「もっと短くできないか」「要点は明確か」を確認します。
- 信頼できる同僚にフィードバックを求める: 「私の説明、分かりやすかったですか？」「話が長くなると感じますか？」など、率直な意見を聞いて改善に繋げます。
まとめ
職場で簡潔に要点を伝えるスキルは、多忙な環境で働く上で非常に価値のある能力です。これは、相手への配慮を示す行為であり、コミュニケーションの効率を高め、誤解を防ぎ、結果として周囲からの信頼を得るための重要な基礎となります。
「結論から話す」「目的と要点を明確にする」「不要な情報を削ぎ落とす」といった具体的なポイントを意識し、日々のコミュニケーションの中で実践を重ねていくことが大切です。特にチャットツールを多用する環境では、テキストでの分かりやすさを工夫することも効果的です。
このスキルはすぐに完璧になるものではありませんが、意識し続けることで必ず向上します。簡潔なコミュニケーションを心がけ、職場の良い関係づくりに繋げていきましょう。