職場で信頼される 認識のズレを防ぐ確認の基本
新入社員や若手社員の皆さんは、日々、上司や先輩、他部署の方から様々な指示や依頼を受ける機会が多いことと思います。仕事を円滑に進める上で、この「指示や依頼を受けた際の確認」は非常に重要なステップとなります。確認を怠ると、後々「思っていたものと違う」「前提が違った」といった認識のズレが生じ、手戻りや関係者からの信頼失墜につながる可能性があります。
なぜ指示や依頼の確認が重要なのか
仕事における認識のズレは、多くの問題の根源となります。特に、口頭での指示、あるいはチャットツールなどテキストのみでの依頼は、意図が正確に伝わりにくく、受け手と送り手の間で解釈が異なることが少なくありません。
確認をすることで、以下のようなメリットが得られます。
- 手戻りの防止: 最初から正しい理解で進めることで、作業のやり直しを防ぎ、時間と労力の無駄を省けます。
- 品質の向上: 依頼者の意図や求める成果物のイメージを正確に把握できるため、期待に応じた、あるいはそれ以上の質の高い成果物を作成しやすくなります。
- 信頼関係の構築: 曖昧なままにせず、しっかりと確認を取る姿勢は、相手に「この人に任せても大丈夫だ」という安心感を与え、信頼につながります。
- 主体的な行動の促進: 依頼の背景や目的を理解することで、指示された作業だけでなく、プラスアルファの提案やより良い進め方を考えられるようになります。
特に技術的なスキルが高い一方で、非技術職の方とのコミュニケーションに課題を感じやすい方もいらっしゃるかもしれません。技術的な専門用語が通じない相手とのやり取りでは、お互いの前提知識が異なるため、意識的な確認がより一層重要になります。
確認すべき具体的な項目
指示や依頼を受けた際に、最低限確認しておきたい基本的な項目は以下の通りです。
- 目的: なぜこのタスクが必要なのか? 最終的に何を目指しているのか?(例:「この資料作成は、来週の顧客向けプレゼンで使うためです」)
- 期日: いつまでに完了すればよいのか? 中間報告の期日やタイミングは?
- 作業内容: 具体的に何をするのか? どこからどこまでが自分の担当範囲か?
- 求める成果物: どのような形式で提出するのか?(例:ドキュメント、コード、報告書など)品質の基準や満たすべき要件は?
- 必要な情報・リソース: 作業を進める上で、他に誰かに聞くべきことはあるか? 参照すべき資料やデータは? 使用できるツールや予算は?
- 報告方法・頻度: 進捗状況をどのように報告すればよいか? どのくらいの頻度で報告が必要か?
- 判断に迷う場合の対応: 想定外の事態や、自分で判断できない問題が発生した場合、誰にどのように相談すればよいか?
これらの項目について、曖昧な点があればその場で質問し、明確にしておくことが重要です。
効果的な確認の方法
確認の方法は、状況や相手との関係性によって様々ですが、いくつか基本的なアプローチがあります。
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口頭での復唱と要約: 指示や依頼を受けたら、自分の理解した内容を相手に伝わるように復唱したり、要約して伝えたりします。「〇〇ということですね。期限は〇〇で、アウトプットは△△の形式でよろしいでしょうか?」のように伝えることで、認識のズレがないかその場で確認できます。
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疑問点の具体的な質問: 曖昧な点や分からない点は、「すみません、〜の部分がよく理解できませんでした。具体的にはどのような内容でしょうか?」のように、具体的に質問します。「分からない」と漠然と伝えるだけでなく、「〜については〇〇という理解ですが、△△で合っていますか?」のように、自分の理解を添えて質問すると、相手もどこを補足説明すればよいか分かりやすくなります。
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テキストでのまとめと共有: 特に複雑な指示や複数の依頼があった場合は、後から見返せるようにテキストで内容をまとめ、相手に確認のために送るのが効果的です。メールやチャットで「先ほどの指示内容をまとめました。以下で認識合っておりますでしょうか?」として、目的、期日、内容、成果物などを箇条書きで記載します。これは非同期コミュニケーションにおいて、後々の手戻りを防ぐ上で非常に有効です。
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期日や成果物のイメージの共有: 単に指示内容を復唱するだけでなく、「〇〇日までに、△△の機能が実装されたソースコードを提出します」のように、具体的な期日と成果物のイメージを明確に伝えて確認します。必要であれば、簡単なアウトラインやプロトタイプを見せて「このようなイメージで進めますが、問題ないでしょうか?」と早期に擦り合わせを行うことも有効です。
ITエンジニア層が意識したい確認のポイント
- ビジネス的な背景の確認: 技術的な要件だけでなく、「なぜこの機能が必要なのか」「利用者は誰で、どのような課題を解決したいのか」といったビジネス的な背景や目的を理解しようと努めます。これにより、単なる実装者としてではなく、目的達成のための最適な方法を提案できるようになり、非技術職の方からの信頼を得やすくなります。
- 仕様の曖昧さを潰す: システム開発においては、仕様の曖昧さがバグや手戻りの温床となります。「〇〇という場合はどうなりますか?」「このパターンは考慮不要ですか?」など、具体的なユースケースや例外処理について積極的に確認します。
- チャットでの確認: チャットは手軽な反面、誤解が生じやすいツールです。重要な確認事項は、過去のログを遡れるように、要点をまとめて改めて確認のメッセージを送る習慣をつけましょう。感情やニュアンスが伝わりにくいため、絵文字やスタンプだけに頼らず、丁寧な言葉遣いを心がけることも大切です。
確認を習慣化する
最初は「こんなことまで聞いて良いのだろうか?」と不安に感じるかもしれません。しかし、曖昧なまま作業を進めて失敗するよりも、その場でしっかりと確認する方が、結果的に自分も相手も助かることがほとんどです。
確認は「面倒な作業」ではなく、仕事の質を高め、人間関係における信頼を築くための「重要なコミュニケーション」であると捉えましょう。小さな依頼からで良いので、目的や期日を復唱して確認する習慣を身につけることから始めてみてはいかがでしょうか。この小さな一歩が、職場でより良い関係を築き、スムーズに仕事を進めるための大きな力となるはずです。