職場で信頼される 分かりやすいドキュメンテーションの基本
職場で信頼される 分かりやすいドキュメンテーションの基本
職場で円滑なコミュニケーションを図り、チームの連携を深める上で、ドキュメンテーションは非常に重要な役割を果たします。特に新入社員や若手社員の皆様にとって、分かりやすいドキュメントを作成するスキルは、周囲からの信頼を得るための一歩となります。
「ドキュメンテーション」と聞くと、技術的な仕様書や長大なマニュアルを想像し、難しく感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ここで言うドキュメンテーションは、日々の報告書、議事録、作業手順のメモ、チャットでの説明、プルリクエストの説明文など、仕事で発生する様々な「情報を文字や図でまとめて伝える」行為全般を指します。
なぜ分かりやすいドキュメンテーションが信頼に繋がるのか
分かりやすいドキュメントを作成することには、多くのメリットがあり、それが結果的に信頼獲得に繋がります。
- 情報の透明性と正確性の向上: 自分の考えや状況を正確に言語化し記録することで、あいまいさが減り、情報がチーム内で透明になります。これにより、「何を考えているか分からない」「状況が見えない」といった不安を払拭し、オープンな姿勢を示すことができます。
- 認識のズレ防止: 口頭での伝達は誤解を生みやすいものです。ドキュメントとして残すことで、お互いの認識を確認し、ズレを防ぐことができます。これは、後から「言った、言わない」のトラブルを避ける上でも重要です。
- 効率的なコミュニケーション: 一度ドキュメントにまとめておけば、何度も同じ説明をする手間が省けます。質問を受ける側も、ドキュメントを参照することで自己解決できる場合が増え、お互いの時間を有効活用できます。特に非同期コミュニケーションが多い現代では、質の高いドキュメントが不可欠です。
- 後からの参照性: 議事録や決定事項、過去の経緯などがドキュメントとして残っていれば、後から参加したメンバーや、時間が経ってから参照が必要になった際に役立ちます。これはチーム全体の知識資産となります。
- 自身の思考整理: 情報を分かりやすくまとめようとすることは、自分自身の思考を整理するプロセスでもあります。論理的に順序立てて記述することで、自身の理解が深まり、問題点に気づくこともあります。
これらの積み重ねが、「あの人は説明が丁寧だ」「情報をちゃんと整理してくれる」「一緒に仕事がしやすい」といった評価に繋がり、信頼の獲得に繋がるのです。
分かりやすいドキュメント作成の基本ポイント
では、具体的にどのようにすれば分かりやすいドキュメントを作成できるのでしょうか。いくつかの基本ポイントをご紹介します。
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目的と読者対象を明確にする 何のためにこのドキュメントを作成するのか、そして誰が読むのかを最初に考えましょう。
- 上司への報告なのか、チームメンバーへの共有なのか、あるいは未来の自分や新しい担当者向けなのか。
- 読者はそのテーマについてどの程度の知識を持っているか? 目的と読者によって、書くべき内容の深さや使うべき言葉が変わってきます。例えば、非技術職の方へ説明する際は、専門用語を避けたり、具体的な例えを用いたりする工夫が必要です。
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構造を考える ドキュメントは、読む人がスムーズに理解できるよう、論理的な流れで構成することが重要です。 一般的な構成例としては以下のようになります。
- タイトル: 内容が一目でわかるように具体的に
- 概要・目的: なぜこのドキュメントがあるのか、何について書かれているのかを簡潔に
- 詳細: 具体的な情報、手順、データなどを記述
- 結論・要約: 最も伝えたいこと、得られた結果
- 次のアクション: 今後どうするのか、誰が何をするのか
- 添付資料・関連リンク: 補足情報
長いドキュメントの場合は、見出しを効果的に使い、必要であれば目次をつけましょう。
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簡潔・正確に記述する 情報を詰め込みすぎず、伝えたいことをシンプルに表現します。曖昧な表現や比喩は避け、具体的な言葉で記述します。
- 「〜かもしれない」「〜だと思われます」といった推測は避け、事実と推測を区別します。
- データを示す際は、出典や取得日時なども含めると信頼性が増します。
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用語を統一し、必要なら定義・補足する チームや部署で使われている共通の用語を使用します。もし複数の言い方がある場合は、統一して使いましょう。 専門用語や略語を使う場合は、読者全員が理解できるか考え、必要であれば簡単な説明を加えます。特に非技術職の方との連携においては、意識的に平易な言葉に置き換える努力が求められます。
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視覚的な工夫を活用する 文字ばかりのドキュメントは読みにくいものです。改行を適切に入れ、箇条書きを使って情報を整理します。
- 重要な箇所は太字にしたり、色を変えたり(ただし多用は避ける)して強調します。
- 複雑な概念や手順は、図や表、フローチャートなどを使うと、一目で理解しやすくなります。
- コードブロックなど、特定の形式で記述したい部分は、適切な記法(Markdownなど)を利用します。
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ネガティブな情報も正直に記述する 問題点や懸念事項、課題なども隠さず正直に記述します。良い情報だけを伝えるのではなく、リスクも含めて共有することで、チームとして対応策を検討できます。これは、自身の誠実さを示すことにも繋がり、信頼を得やすくなります。
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レビューやフィードバックを求める/受け入れる 可能であれば、作成したドキュメントを他の人に見てもらい、分かりにくい点がないかフィードバックをもらいましょう。他者の視点を取り入れることで、より質の高いドキュメントになります。また、フィードバックを素直に受け入れる姿勢も信頼関係を築く上で重要です。
ITエンジニア・クリエイターの現場での応用例
ITエンジニアやクリエイターの現場では、以下のような場面でドキュメンテーションの基本が役立ちます。
- プルリクエスト/マージリクエストの説明文: 単に「〇〇機能を追加」だけでなく、「この変更の目的」「実装の詳細」「影響範囲」「レビュワーに特に見てほしい点」などを具体的に記述することで、レビュワーがコードを理解しやすくなり、迅速かつ的確なレビューに繋がります。
- 障害発生時の報告書: 何が起きたか、いつ起きたか、影響範囲、原因(推測でも)、行った対応、暫定対応、恒久対応の計画などを時系列で整理して記述します。関係者全体への正確な状況共有は信頼回復の第一歩です。
- 新しい技術やツールの調査結果: 導入するメリット・デメリット、既存システムとの連携、学習コスト、必要なリソースなどを比較検討した結果を、決定者が判断しやすいようにまとめます。
- 非技術職への機能説明: 専門用語を使わず、ユーザーにとってのメリットや操作手順を分かりやすく説明します。画面キャプチャや簡単な図を多用すると効果的です。
- 日報・週報: 単なるタスクリストではなく、進捗状況(完了、進行中、ブロックされている)、発生した課題、次に何をするか、困っていることなどを具体的に記述します。これにより、上司やチームメンバーが状況を把握しやすくなります。
- 会議の議事録: 決定事項、保留事項、宿題(担当者と期日)を明確に記録します。誰が何を言ったかより、何が決まったか、何を次にやるかが重要です。
これらのドキュメントは、単なる作業の記録ではなく、チームメンバーや関係者との重要なコミュニケーションツールです。分かりやすく丁寧に作成することを心がけましょう。
まとめ
職場で信頼される関係を築く上で、分かりやすいドキュメンテーションは欠かせない基礎スキルの一つです。情報を正確に、簡潔に、そして読み手の立場になって整理し伝えることは、情報の透明性を高め、認識のズレを防ぎ、チーム全体の効率を高めます。
日々の業務で作成するあらゆるドキュメント(報告書、議事録、チャットでの説明、コードの説明など)において、「どうすれば相手に一番伝わるだろうか」という視点を持つことから始めてみてください。完璧なドキュメントを最初から目指す必要はありません。少しずつ意識することで、あなたの作成するドキュメントの質は向上し、それが職場で着実に信頼を築く力となるはずです。