職場で信頼される 褒める・認めるの基本
職場で「褒める・認める」ことの重要性
新入社員や若手社員の皆さんにとって、職場で良好な人間関係を築くことは、仕事の成果を出す上でも、自身の働きがいを高める上でも非常に重要です。そして、良好な関係を築くための一つの効果的な方法が、同僚や上司、部下、あるいは他部署の方々の貢献を「褒める」または「認める」ことです。
「褒める・認める」という行為は、単に相手を喜ばせるためだけではありません。相手の努力や成果を正当に評価し、言葉にして伝えることで、相手は「自分の仕事が見られている」「貢献が認められている」と感じ、モチベーションの向上につながります。また、これは感謝の意を示すことでもあり、相互の信頼関係を強化し、円滑なコミュニケーションや協力体制を築く土台となります。特にチームで仕事を進める際には、お互いを認め合う文化が生産性の向上に貢献することは広く知られています。
技術的なスキルが高い方も多いと思いますが、ビジネスにおいては、他者との連携なしに大きな成果を出すことは困難です。日々の業務の中で、他者の貢献を見つけ、適切に伝えることは、あなたの人間関係構築スキルを高め、結果として技術者としての信頼性をも高めることにつながります。
では、具体的にどのように「褒める」「認める」ことを実践すれば良いのでしょうか。ここからは、そのための基本原則と具体的なポイントを解説します。
職場で信頼される「褒める・認める」ための基本原則
相手に気持ちよく受け取ってもらい、関係構築に繋がる「褒める・認める」には、いくつかの基本的な原則があります。
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具体的に伝える: 「すごいですね」「頑張っていますね」といった抽象的な褒め方も良いですが、より効果的なのは、具体的に「何が」「どうすごかったのか」「どのような努力が見られたのか」を伝えることです。例えば、「〇〇さんが作成してくれた議事録、非常に分かりやすく、特に△△の点が明確にまとめられていたので、その後の作業がスムーズに進みました」のように、具体的な行動や成果に焦点を当てます。
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素直な気持ちで伝える: 打算や社交辞令ではなく、心から感じた良い点や感謝の気持ちを伝えることが重要です。相手は意外とあなたの本心を感じ取ります。飾らない、正直な言葉で伝えましょう。
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タイミングを意識する: 良いと思ったこと、感謝したいことを見つけたら、できるだけ早く伝えるように心がけましょう。時間が経つと、具体的な内容を忘れてしまったり、相手にとっても何に対する評価なのか分かりにくくなったりします。可能であれば、その場ですぐに、難しければ、その日のうちに伝えるのが望ましいです。
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行動や努力に焦点を当てる: 「〇〇さんは優秀だね」といった人格や能力全体を評価するよりも、「〇〇さんの△△の課題に対する粘り強い調査のおかげで解決できました」のように、具体的な行動、プロセス、努力に焦点を当てる方が、相手は「自分の努力が認められた」と感じやすく、次へのモチベーションにつながります。
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相手の状況や関係性を考慮する: 相手が謙遜しやすいタイプか、人前で褒められることを好むか、それとも1対1の方が良いかなど、相手の性格やあなたとの関係性を考慮することも大切です。また、忙しいタイミングを避けたり、状況に合わせた伝え方(例えば、チャットか対面かなど)を選びます。
具体的な実践方法
これらの原則を踏まえ、具体的な実践方法を見ていきましょう。
対面でのコミュニケーション
- 一対一での会話: 業務の合間や少し落ち着いたタイミングで、「そういえば先日の〇〇、助かりました。特に△△の対応が素晴らしかったです」のように、具体的に感謝や評価を伝えます。相手の目を見て、落ち着いたトーンで話すことが信頼感を高めます。
- 会議やミーティング: プロジェクトの成功要因などを話す際に、特定の個人の具体的な貢献に触れることで、チーム全体の士気を高めることもできます。ただし、これは相手が人前で褒められることを嫌がらない場合に限ります。
チャットツールでのコミュニケーション
現代の職場では、チャットツールでのコミュニケーションが中心となることも多いでしょう。チャットでも効果的に「褒める・認める」ことが可能です。
- DM(ダイレクトメッセージ)で伝える: 個人的な貢献や、デリケートな内容を含む場合は、DMで1対1のメッセージとして送るのが良いでしょう。「先ほど送ってくれた〇〇の件、分かりやすくまとめてくれてありがとう。すぐに確認できて助かりました。」のように、具体性と感謝を伝えます。
- 公開チャンネルで伝える: チーム全体や関連部署が見るチャンネルで、特定の人の貢献を紹介することも有効です。ただし、全員が見る場であることを意識し、公平性にも配慮が必要です。「〇〇さんの尽力のおかげで△△のタスクが無事完了しました。特に□□の難題を解決していただき、大変助かりました!」のように、ポジティブな情報を共有します。絵文字やスタンプも、感謝やポジティブな感情を伝えるのに役立ちますが、TPOをわきまえ、適切なものを選びましょう。
- 非同期コミュニケーションの活用: 技術的な調査や困難なバグ修正など、すぐに成果が見えにくい貢献に対しても、「〇〇さんが△△について調査を進めてくれているおかげで、解決の糸口が見えてきました。継続的な努力に感謝します。」のように、プロセスや努力を認めるメッセージを送ることで、相手のモチベーションを維持することに繋がります。
非技術職の方への伝え方のヒント
ITエンジニアやクリエイターの皆さんにとって、非技術職のメンバーとの連携は不可欠です。彼らの貢献を適切に評価し伝えることは、部門間の信頼関係構築に繋がります。
- 非技術的な貢献を具体的に褒める: 例えば、営業資料の分かりやすさ、顧客への丁寧な説明、複雑な事務手続きをスムーズに進めたことなど、非技術的なスキルや行動に焦点を当て、「〇〇さんが作成してくれた資料のおかげで、技術的な内容が顧客にもとても伝わりやすくなりました」のように具体的に伝えます。
- 技術的な貢献を非技術職に分かる言葉で説明して褒める: 自分が担当した技術的な改善が、非技術職の業務にどのような良い影響を与えたかを説明することで、技術的な貢献の価値を理解してもらいやすくなります。「今回のシステム改修で、〇〇さんがいつも手作業で行っていた△△のデータ入力が自動化され、作業時間が大幅に削減できました。これで〇〇さんは他の重要な業務にもっと時間を割けますね。」のように、相手にとってのメリットを明確に伝えます。
避けるべき点
最後に、「褒める・認める」行為において避けるべき点をいくつか挙げます。
- お世辞や嘘になる: 事実に基づかない過剰な褒め方や、心にもないお世辞は、かえって相手からの信頼を失う原因となります。
- 他の人と比較する: 特定の誰かを褒める際に、他の誰かを引き合いに出して比較するような言い方は避けてください。不必要な競争意識を生んだり、他の人のモチベーションを下げたりする可能性があります。
- 目的が透けて見えるような伝え方: 何かをお願いしたいから褒める、といった下心がある伝え方は、相手に不信感を与えます。
- 過剰になりすぎる: 何でもかんでも褒めすぎると、言葉の重みがなくなり、本当に伝えたい感謝や評価が伝わりにくくなります。
まとめ
職場で同僚や関係者の良い点を見つけ、適切に「褒める」「認める」ことは、あなたの人間関係を豊かにし、信頼性を高めるための基礎となります。これは特別なことではなく、日々のコミュニケーションの中で少し意識するだけで実践できることです。
具体的に、素直に、タイミングよく、そして相手の行動や努力に焦点を当てて伝えることを心がけてください。対面でも、チャットでも、状況に合わせた形で実践可能です。特に、多様なバックグラウンドを持つ人々と協力する際には、互いの貢献を認め合う姿勢が、円滑なチームワークと高い成果につながります。
今日から、周囲の人々の「良い点」や「頑張っている点」を探し、それを言葉にして伝えてみませんか。この小さな一歩が、職場の人間関係をより良いものにしていくはずです。